ネットワークあい会報16号

5 月 8 日から、新型コロナウィルスの対策がインフルエンザ並みになったということで、公共の場所などでも利用条件が緩和されました。しかし身近なところで「コロナに感染した」という話を聞くと不安がありますが、これからも注意しつつ対面での講演会等開催していきたいと思います。
本年度の総会を 5 月 27 日(土)に開催いたしました。

ネットワークあいからのお願い

第 16 回 定期総会・報告

当日の会員の参加状況は、以下の通りで総会は成立しました。
本日出席 13 人 / 委任状 32 人 (正会員数 72 人)

審議事項は原案のとおり承認されました。
議事

  1. 2022 年度事業報告の承認を求める件について
  2. 2022 年度 決算報告の承認を求める件について監査報告
  3. 2023 年度 事業計画(案)審議の件について
  4. 2023 年度 予算(案)審議の件について
  5. 役員の改選について
    *内容については、総会資料をご参照下さい。

お詫び
ニュースレター題 35 号の“今後予定されている講演会のお知らせ”で 7 月 9 日(日)に山梨県立大学 西澤哲先生の講演会「トラウマの理解と対応」を実施することをお知らせしましたが、会場の都合で延期となりました。予定していただいた方には大変ご迷惑をおかけしました。日時・会場など決まり次第再度お知らせ致します。内容に変更はありません。今後ともよろしくお願い申し上げます。

≪第 1 号議案≫2022 年度事業報告の承諾を求める件について(仲根泰子事務局長)
・2022 年度は新型コロナウィルス感染状況が前半は拡大、後半は減少という経緯はありましたが、少しずつ規制が緩められたことで、5 月と 2 月に対面での講演会を開催し、活発な意見交換をすることができました。また、県里親会との連携を深めるための話し合いを持ち講師の派遣も
行うことができました。

・冊子「わたしの声を聞いて -ケアリーバ―の訴え」は、昨年度 9 月~今年度 8 月までの期間で、生活協同組合パルシステム茨城・栃木「くらし活動助成基金」の助成により作成しました。
児童養護施設などで育って親の後立てなしに 1 人立ちした若者の生活が大変であることは、想像できますが、当事者である若者がどのような支援を望んでいるのか、生の声を聞かせてもらい冊子にまとめました。18 才を過ぎて保護の枠組がなくなった若者への支援を考える上で大切な一声だと思います。
その他、従来からの継続事業であるオレンジライン(電話相談)は 89 件で多いとはいえませんが、初めての方ではいろいろなところに相談をしながら思うように話しを聞いてもらえなかった。という方が多く、たらい回しにならないように気を付けています。
オレンジサロン(被虐待体験者の居場所事業)は参加者が数人であるため、コロナ禍の期間中も会場が閉鎖にならない限り実施し、延べ 54 人の参加がありました。初めて参加された 10 代の学生の場合、18 才過ぎ、実家から離れても親からの虐待が続いているとの訴えがあり、今後 18 才以上の若者のシェルターの必要があると感じました。

≪第 2 号議案≫2022 年度決算報告の承諾を求める件について
収入としては会費と寄付金が柱となります。
会費については、あいの事業を経済的に支援していただく意味でも大切な資金となります。今後ともご協力をお願いいたします。同時に会員のご希望による事業も可能なので、職場での研修等ご活用いただければ幸いです。
寄付金については、250 万円を篤志家の方から頂き、大変感謝しております。今後とも皆様のご協力をお願いいたします。

≪第 3 号議案≫2023 年度事業計画(案)審議の件について
2023 年度は新型コロナウィルスがインフルエンザ並みの扱いになり、大幅に規制が緩和されたことで、不安はありますが、従来通りの事業が実施できるのではないかと思います。まだ具体化していない事業もありますが、詳細が決まり次第お知らせいたします。
また、会員の皆様からご希望などお寄せいただきたいと思います。

≪第 4 号議案≫2023 年度予算(案)審議の件について
2022 年度の寄付により少しゆとりがありますが、今後の助成金をみながら応募を考えたいと思います。

≪第 5 号議案≫役員の改選について
今回は、坂本博之氏、小宅泰郎氏、横須賀聡子氏、関貴教氏の 4 名が留任、河野歌子氏が退任、新理事として岡田崇弘氏が着任され、理事の互選によって引き続き坂本博之氏が理事長に選ばれたことを報告しました。

秋山邦久先生 講演会「こども虐待と親との関わり」に参加して
ネットワークあい会員 坂井寿栄子(社会福祉士)

令和 5 年 5 月 27 日(土),常磐大学人間科学部心理学科教授 秋山邦久先生の講演会が開催されました。秋山先生は秋田県の児童相談所に 16 年勤務されていたとのことで,子ども虐待をめぐる問題や支援の在り方について,豊富な実務経験による具体的な事例の話も交
えながら,とても熱心に分かりやすくご教授くださいました。

近年,少子化の進行にもかかわらず,児童相談所の児童虐待相談対応件数は,増加の一途を辿っています。秋山先生の資料によると,児童虐待防止法が施行された 2000 年は「1万 7725 件」でしたが,2020 年には「20 万 5029 件」にまで上り,20 年間で 11.5 倍以上になったことになります。これは,虐待について社会的関心が高まり,虐待の相談・通報が増えたことも一因と考えられますが,父母間等の暴言暴力を子どもに見せること(面前DV)が「心理的虐待」にあたると認知され,警察から児相への通告が増加したことが大きな要因となっています。

だからと言って,「今の親はひどい!昔の親は愛情があったのに…」ということではなく,今の親も愛情はあるし,多くの親が子育てを懸命に頑張っています。ただ「愛情があること」と「子育てスキルがあること」はイコールではなく,「遊べること」と「養育すること」も別のものです。「愛情はあっても子育てスキルがなければ,子育てはできない」と秋山先生は言います。虐待をしてしまう親は,子育ての仕方を学ぶ機会がないまま親になり,子育ての知識や技術を身に付けることができず,養育困難に陥ってしまったと考える必要があります。

秋山先生によると,虐待の早期発見・早期対応の重要性は,1子どもの命を守る 2子
どもの心を殺さない 3保護者を犯罪者にしない 4援助者が傷つかないことにあります。

特に,子どもを守るためにも,親を“敵”にすることなく,「あなたを犯罪者にしないためです」という姿勢で対応することが重要とのことです。
そのためにも,親が援助を求める勇気,子どもを手放す勇気を持つことも必要になります。
つまり,親が自ら1自分が犯罪者にならないため 2子どもの命と心を殺さないために,特別養子縁組・里親制度・児童相談所・保健所・女性相談所・赤ちゃんポスト等の社会資源を利用して,「親から子を離す」という選択をすることも非常に重要です。

虐待で親子分離した子どもと家族が再び一緒に生活することを目指す『家族の再統合』よりも,「離れていても,自分たちは家族である」と思えるような『家族アイデンティティー』を育むことの方が有意義なのではないかという秋山先生の言葉が,私は強く心に残りました。

また,虐待のサインを見逃さないためには,1視野を広げる 2視座を変える 3視点
を定めることが大切です。中でも「視座を変える」とは,「相手の文脈に合った対応をする」
という意味で,援助者は親子の背景や考えを理解し,その立場になって支援する必要があり
ます。

秋山先生は落語がご趣味とのことで,ユーモアたっぷりの軽妙な語り口で楽しく会場を沸かせつつ,虐待という重たい話であっても重くなり過ぎずにお話しされ,それによって一層強い印象で記憶に残るということを教えてくださいました。(経験+情動=記憶の長期化とのこと)子どもたちの明るい未来のために,私達にできることを今後も皆さんと共に考えたいです。

「重い話だけど、楽しい雰囲気で話す講演会でした」

ネットワークあい会員ボランティア 佐藤民子

去る5月 27 日、常磐大学教授 秋山邦久先生のお話をきいてきました。「子ども虐待と親との関わり」というテーマでした。たいへん広くて、中身の濃いお話をきくことができました。
「子育ては、習ったことがない人にはできない」「子供は叱らなくてよい。適切な注意をすればよい」というお話からスタート。「適切」は「その場合に良く当てはまっていて、ふさわしいこと」です。今、我が身をふりかえれば、「叱られた」記憶はあっても「適切な注意」をしてもらったかは良く覚えていません。覚えているのは、親の日々の姿を見る、ということが、「習う」ということなのかもしてませんね。

秋山先生のお話の中で重要だと思ったことのひとつに、保護された子供を親元へかえす時に、親子で仲良く遊べるようになることよりも、親が子供と離れて暮らしている間に、同じこと、例えば同じ仕事をやり続けられているかどうかを見る。ということがありました。本当に、生活するということ、特に子育ては、同じことのくり返しです。
楽しいことばかりじゃない。その作業をやり続けることができるかどうかは、子どもが安心して育っていくのに欠かせない重要なことです。
また、親に対する支援で大切なことは、本音を話してもらえるかどうかということです。秋山先生はその時の支援者の心構えについて、その親と同じ土台に立つこと、相手の文脈に合った対応をすることが必要だと話されました。「文脈」という言葉についてですが、昔人間の私にはあまりなじみがなく、調べてみたところ、斎藤孝の造語に「文脈力」という言葉があって、そこからきているのかもしてません。その人の生きてきた背景とか価値観とか、そういうところを理解して、支援者が同じ土台に立つ努力をすることで、安心して話ができる関係になれることもあるそうです。資料には「同じものを見ているようで、みな違う世界に生きているのかも」と書いてあります。

この意識を持つことは、相手と良い関係を作る上で、とても大事なことだと、私も思いました。
そのほかに印象に残ったのは、行政等でよく使われている「見守りましょう」という言葉のあいまいさを、期間・時間、何をどのように、頻度、どこに報告・連絡するか等を、具体的にすることで、より良い結果につげていけるのではないかということ。
「ケース検討会」を「作戦会議」というものに変えていくことで、より良い支援が出来るようになるのではないかということ。またボランティアである私は、資料にある「ボランティアは自己満足になりがち、知識と技術を身に付けて」という言葉を読んで、ハッとさせられました。

お話の締めくくりは、「重いケースを楽しい雰囲気で話すのが大事」でした。まさに、そのとおりのテンポ良く素晴らしい話術の(秋山先生は落語の特技をお持ちなのでは?)
お話でした。大学で学生達を教えていらっしゃるそうなので、その中から、良い支援者がたくさん育っていくことを願います。

「子ども虐待と親との関わり」

ネットワークあい会員 真家智子

秋山先生は、秋田県の児童相談所や福祉事務所の心理判定員を 16 年務められた後、大学の先生となられている。日々の厳しい現場の中で実践を積み重ねられ、多様な価値観があること、対処方法の工夫など貴重な経験談を交えた講演をお聴きできる機会に恵まれた。

「子育てできない人はいるんですよ」と言う言葉にどきっとして、私も成人したわが子にどんな風に思われていたんだかと思ったが、そういう枠の話ではなかった。どうやって世話をしたらいいか知らない、愛情とか親子の関わり以前に子育てを見たり、聴いたりもしてこなかったから、技術、技能として習得する機会がなかったという話だった。親に受容してと一生懸命伝えても、未学習であれば子育てはできないんですよ、愛情をかけることと養育するということは別なんですとのお話だった。児童相談所での家族分離から再統合の判定では、親子で遊ぶことができるかどうかを観察したりするが、
子育ては毎日同じことの繰り返しであるので、子育てができるかどうかを判断するためには、同じ仕事を続けられているか、あるいは同じパートナーと交際が続いているか、子育ての技術があるかどうかを重視するとのことだった。実践の中で培われた専門家の視点は違うんだなと思った。

それから、「巨人の星」の懐かしい映像を見せていただいた。当時の文部省が推奨していたという映像はパワハラ、セクハラ、虐待のオンパレードだった。私もこの世代であるが、見ていた子どもがこれでいいんだ、これが家族の姿だと誤学習のまま親になったとしたら、それも虐待の数が減らない理由の一つかもしれないと説明していただいた。虐待の相談件数が増えているのは、被害者があれは虐待だったと気づいた、法律が改定された、相談しやすくなった、警察の通報が増えた等々挙げられるが、あらためて虐待などの暴力について正しい情報や対処法を子どもだけでなく、大人も再学習する機会が大事だと思った。「巨人の星」の様なパワハラ、セクハラ、虐待は暴力であって人権侵害だと気づく機会は、テレビやネットを見ていてもたくさん情報が溢れているように思うが、そういった情報が入ってこないほど厳しい環境や心理状態で生きている人は想像以上に多いのかもしれない。

また、「巨人の星」は外から見えやすい虐待であるが、近年は見えない虐待が増え、ネグレクトや心理的虐待などサイレント化していているとのことだった。外傷も見えないところにあったり、性暴力も外見からは分かりにくい。そのため、被虐待児の後遺症も重度化し、早い段階でのケアがないと、大人になってからも自分や、あるいは他人の心や身体を傷つけることにつながるとのことだった。不幸にも被害にあったとしても、声をあげやすく、相談しやすく、早期にケアにつながり、人権を大切にする制度や体制も急務であると思った。
自分も仲間と一緒に、学校や児童養護施設でこどもへの暴力防止 CAP の活動をしているが、できることをこれからも地道に続けていこうと思った。

ありがとうございました。

2022 年度 寄付者一覧(敬称略)

會田定彦 齋藤久子 中井聖 平野真紀子
秋元元子 佐藤 英之 仲根泰子 人見加陽子
岩熊恵子 鈴木博人 根本和子 森田真理子
河野淳一 谷村和美 野村眞実 渡部誠一
小林幸弘 都司みよ子 林君夫

2023 年度会費納入のお願い

会員の皆様には、日頃から NPO 法人いばらき子どもの虐待防止ネットワークあいの活動にご理解を頂きまして、ありがとうございます。
あいは、会員の皆様の会費と活動に賛同して下さる皆様からの温かい寄付によって活動しております。あいの活動を継続していくために、本年度(2023 年度)会費を納入いただけますようお願いします。なお、既に納入頂いた会員様には心より感謝し、お礼を申し上げます。
*ATM 払込取扱票を利用してお振込みをされる場合、名前等の記入をお忘れなくお願いします。

≪ゆうちょ銀行≫ (払込取扱 票)
口 座 番 号 00130-3-600272
口 座 名 いばらき子どもの虐待防止ネットワークあい

寄付への感謝

ネットワークあいとは

募集中のボランティア

◎オレンジライン
相談電話番号:029-309-7670

子育てに不安のある方、子どもの頃のトラウマを抱えている方、虐待体験に悩みを抱えている方の電話相談です。

毎週月・水・木曜日:10時~15時(休み:祝祭日、年末年始、お盆期間)

過去記事

茨城子供虐待防止支援組織 水戸

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